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23※
腹いっぱいに勃起した野郎のものを、しかも二本捩じ込まれて平気でいられる人間がいるなら是非ともお会いしたい。
内臓を内側から突き破られそうなほどの圧迫感に息苦しさとか痛みとか、そんなものを感じるほどの余裕もなかった。
まるで熱した鉄の棒でも突っ込まれたんじゃないかと疑いたくなるまでのその熱量に圧倒され、何も考えられなかった。
ただ拒むこともできず、受け入れることしかできない体はキャパオーバーでどうにかなりそうで、二人に挟まれたまま俺は文字通り思考放棄していた。
けれどそれもほんの一瞬のことだった。
中の捩じ込まれた性器の内どちらかが動いた瞬間、内側の内壁を腹の内側から引き摺り出されるような痛みに現実へと引き返される。
「ぅ、ぐ……ッ! ひ……ッ!」
熱い、熱い、なんだこれ、絶対どこかやばいことになっている。
熱を持った腹の中、麻痺しかけていたそこの感覚は次第に鋭利になっていき、靄がかって意識は下腹部へ集中する。
括約筋を押し広げるかのように腰を動かす五十嵐に、下腹部が跳ねる。このままではやばい。そう思うのに、既に能義のものを飲み込んでいた体は自由に動かせるはずもなかった。
「っ、いけません尾張さん。ちゃんと呼吸をしないと……死んでしまいますよ」
息の方法をも忘れ、痛みを堪えるために能義の胸倉を掴んだときだ。
伸びてきた細い指先に顎下を撫でられ、そのまま親指で唇をなぞられる。まるでぐずる子供をあやすような優しい声だが、内容は到底笑い事ではなかった。
本気で、下手したら死にそう。こんな連中相手に腹上死なんて冗談ではないと思うが、五十嵐が腰を押し進める度にゴリゴリと中で性器同士が擦れる感触に思考がぶっ飛びそうになる。指先から力が抜け、腰が痙攣する。
苦しいはずなのに、それ以上にどろりとした得体の知れない感覚が腹の底から溢れ出るみたいで混乱した。
「ッ、ぅ、ひ……ぐぅ……ッ!」
「っ、キッツ……入るか、これ……」
「入るかどうかではなく、挿れるんですよ」
「っ、へ」
ほら、と伸びてきた能義の手に大きく臀部を鷲掴みにされる。
左右の尻タブを押し広げられる。指先で既に二本のブツを飲み込んだそこを指で更に拡げられると、無遠慮に入り込んでくるそれを拒むこともできず息を飲む。
瞬間、ズッと奥へと侵入してくるその感覚に背骨が溶けそうなほどの疼きが走り、声にならない声が漏れた。
激しい痛みの中、得体の知れない場違いなその違和感に頭が混乱する。
「ふ……ッ、ぐ、ひ……ッ!」
「お前、本当……えげつねえことするな」
「……っ、ふふ、何言ってるんですか……尾張の中はこんなにも喜んでるではありませんか。ねえ、尾張さん?」
「っ、んひ、ぅ……ぐ……っぅ、うぅぅ……ッ!」
二人が話す度に腹の中から声が振動で伝わってきて、それだけでもえげつないほどの刺激となって襲いかかってくる。腹の中でいろいろな体液が混ざり合い粘った音が響き、逃げる腰を捕らえられ、あくまでゆっくりと腰を進めてくる五十嵐に俺は辛うじて意識を飛ばさずにいられた。
だからこそ余計、自分の中へと入り込んでくる感触が余計生々しく伝わってきて辛かった。
また無意識の内に呼吸が止まっていたらしい、息苦しさに口を開き、息を吸ったとき。
腰を抱えられ、一気に腰を沈めてくる五十嵐。力んだところで止めることもできず、あっという間に根本までねじ込まれた。
大分感覚が慣れてきたところにこれだ、声も出すことができなかった。腰を固定され、二本の性器を根本まで飲み込んだ腹の中は表面にくっきりと形でも出てるんじゃないか?と思えるほどいっぱいになっていて、息苦しさと、それ以上にこの屈辱的な状況に、それもこうして受け止めてしまっている自分の体が嫌で嫌で堪らなく恐怖でしかなかった。
「ふ、ふふ……っ流石の尾張さんも二人分はキツかったでしょうか?」
うっとりと腹部を撫でられ、ぞわぞわと背筋が震える。意識したくなかった。けれど、能義が動くだけで腹の中の性器が擦れ合い、電流のような刺激が走る。
「んぐ、ッぅご、くな……ッ!」
「馬鹿か。……俺たちが動かないと終わんねえだろ」
「それとも、お前一人で上手に動けんのか?」背後から腰へと回される大きな掌に腰から背筋を撫で上げられ、囁かれる。心なしか下腹部から流れてくる脈が加速したような気がしたが、これは、もしかして、俺の脈なのか。最早どれが誰のものなのかも検討つかない。
「ほお……それは良い案ではありませんか、ふふ、この角度から私達に跨って一生懸命腰を動かす尾張さんを眺めるのもなかなか楽しそうですね」
「な、に……ッ!」
「おや、何を期待したんですか? ……中、ヒクヒク震えてますよ」
「……ッ、ふ……!」
腰を緩く動かされ、堪らず仰け反る。内側から撫でられるだけで息が止まりそうだった。腰を浮かそうとするが四肢に力が入らず、支えることもできずに自ら腰を落としてはその感覚に悶絶する。
この野郎、絶対許さねえ。
咄嗟にシャツの襟首を噛み、情けない声を出さないようにと堪える。けれど、すぐに背後から伸びてきた無骨な指先に唇を掴まれる。
「っん、ふ、ぅ……ッ!」
「……おい、声堪えんなよ」
「みっともねえ声、もっと聞かせろよ」五十嵐の低い声は鼓膜から腰へと落ちる。唇を強引に割って入ってくる指先に口の中を荒らされ、舌を引き摺り出された。
「っ、へ、め」
舌を引きずり出されれば、口を閉じるにも閉じれない。
開かされた喉の奥から舌足らずな自分の声が聞こえてくるだけで血の気が引く。ニコニコと笑う能義と、じっとこちらを見下ろす五十嵐にいい予感がしなかったからだ。
それからのことはもう思い出したくない。
オナホよろしく好き勝手中を舐め回される。いくら慣らされていたとはいえ限度がある。が、コイツラにはそこらへんの優しさを期待する方が馬鹿な話であった。
「っぅ、あッ、は、ッぅうぁ……ッ!」
突き上げられる度に開きっぱなしの口からは自分のものとは思いたくないような声とともに透明の唾液が溢れる。
こいつらさっさとイッてくれ。
中では膨張するだけした二本の性器がぐっちゃぐちゃに中を掻き回していくばかりで、そろそろ射精するだろうかという状況になってからどれくらい経ってるのか自分でもわからない。その間に何度か射精してしまった自分がただ悔しくて、それ以上に恥ずかしかった。
痛みしかなかったそれは次第に体に馴染んでいき、今では少しの刺激だけでも強烈な快感となって襲いかかってくる。息苦しさは変わらない。けれどその圧迫感すら馴染み、痛みは熱となり腰が震えた。
「ッふぅ、ぅ、ひ……ッ!」
「やはり、私の目は間違っていなかったようですね。尾張さん貴方才能ありますよ」
「貴方にとっては不本意でしょうが」笑う能義はとろとろと先走りだか精液だか最早混ざりまくった体液で汚れた性器を指先で擽り、笑う。その刺激だけで脳髄が蕩けそうなほど熱くなり、思考が飛びかける。
男相手にそんなこと褒められて喜ぶやつがいるか。
そう言い返してやりたいところだったが、尿道を指の腹で柔らかく潰すように擦られれば瞬間腰が馬鹿みたいに震える。
「っ、ぅ、あ……ッ! ッは、ぁ……ッ!」
肉が潰れるような感触とともに中をゴリゴリと擦られ、そのたびにおぞましい声が漏れ出る。
「才能って、お前を喜ばせる才能かよ……」
「っ、くく……それもですが……貴方も喜んでるではありませんか、彩乃」
「……」
「っぅあ、ぁッ……やっ、め、うご、く、ふッ……んんぅ……ッ!」
のうのうと喋ってる連中にムカついて睨んだ矢先、五十嵐に唇を塞がれる。躊躇ない口づけに、仕舞いそびれていた舌を絡め取られてしまった。
「んッ、ぅ、ふッ、うぅ……!」
下腹部では交互に出し入れされ、口の中は五十嵐に蹂躙される。意識があっちこっちに飛んで、心がどこにあるのかもわからない。
腰が揺れ、いつの間にかに能義の手の中で懲りもなく勃起したそこからは最早何もでなかった。根本まで深く腰を打ち付けられる。
瞬間、最奥で吐き出されるその感覚にぎょっとする。
中に出される感覚には覚えがあったが、それでも状況が昨日とはまるで違う。
奥へたっぷりと流し込まれるそれに、力んだ全身はのけぞり、つま先までもがぴんと突っ張った。声はもう出ない。大量に吐き出されるそれにただでさえいっぱいになっていたそこからは受け止めきれずに溢れ出し、腿を濡らした。
つられて勃起していた自分のからとろりと溢れる体液を見て、五十嵐は皮肉げに笑う。
「っ、は……一番喜んでんのはコイツだろ」
自分がどんな顔をしてるのかすら分からない。全神経が下腹部に持ってかれて、取り繕う余裕もなかった。倒れそうになる上半身を抱き止め、能義は「違いないですね」と笑う。反論する元気もなかった。
まだこいつらやる気かよ。
収まるどころか反応してる中のそれらに絶望する。
体力はある方だと自負していたが、俺は今その自信を失いそうになっていた。二日連続の肉体酷使に限界に達しそうになっていた。この際誰でもいい、情けない姿を見られたくないからと言って意固地になるつもりはない、もうなんでもいいからこいつらを止めてくれ。
そう、朦朧とした意識の中強く願った。
その矢先だった。
扉が強くノックされた。五十嵐と能義が反応するのと扉が蹴り飛ばされる勢いで開いたのはほぼ同時だった。
「政岡零児ィ!! 貴様がいることは分かってる!! 出てこい!!」
聞こえてくるその声に、目を向けなくても誰がやってきたのかはすぐに理解できた。同時に血の気が引く。
風紀委員長・野辺鴻志。
確かにこの際助けてくれるなら誰でもいいとは言ったが、神様、よりによってこいつはないだろう。
最悪なんてものではない。
なんでこいつが、とかそんなツッコミをしてる場合ではない。
二人に挟まれたこの体勢をよりによってこの拗らせ潔癖野郎に見られた。
その事実に、目の前が真っ暗になっていく。
「き、き、貴様ら何をしている?!」
声が思いっきり裏返っている。野辺も野辺でまさか現在進行形で不純行為が行われてるなんて思いもよらなかったらしい。
それは俺だって同じだ。誰がこんなことになるなんて予想できただろうか。
「チッ……うるせえやつがきた」
「まったく……彩乃がきちんと鍵を掛けておかないからですよ。……あ、萎えました」
「っ、いいから、退けッ!」
何を人に突っ込んだまま呑気に話し合ってるんだ。一秒でも早くこの状況から逃げ出したいのにも関わらず俺から手を離そうとしない二人にいい加減痺れを切らし、能義を蹴ろうとする。が、まるで力が入らない。
それどころか。
「……っ、むがッ」
自分の肩口へと顔を押し付けるように、能義に抱きしめられる。野辺から顔が見えないようにしてくれているのかと思ったが、まさかこいつにそんな配慮があるとも思いづらい。
「おや風紀委員長……ノックもなしに勝手に入るなんて不躾ではありませんか?」
「そんなことはどうでもいい、この神聖なる学園のッ! 中でも最も崇高なる生徒会室でそのような下劣な……というか何をしてる?! 二人がかりなどとは悍ましい……ッケダモノか貴様ら?!」
「……おい要件をさっさと言え、会長ならここにはいねーぞ」
「そうか、なら無駄足だったようだな。……って、貴様そう言えば俺が見逃すと思ってるのか?! 今までは大人しくしていたから黙っていたが裏ではやってることはあの猿野郎どもと同じ、否、それ以上に悪質ではないか!!」
いつもならば過剰反応すぎやしないか?と呆れていた野辺の言葉だが今この状況では同意せざるを得なかった。というかこいつの反応が正常のようにすら思えるのは俺がこの生徒会の裏の顔(というか元々隠されてもいなかったが)を見てしまったからだろうか。
野辺がまともに見えて仕方ない。
「何をそう騒いでると思えば……貴方の心配するような事実は何もありませんよ。寧ろこれも慈善活動の一端のようなもの。……この子がこういった行為に慣れないというので私達は手伝ってあげていたんですよ」
「ねえ?」と囁きかけられ、ドサクサに紛れて人の腰をぐっと寄せる能義に堪らず飛び上がりそうになる。声を聞かれてはまずい、そう我慢してるのを知っててだ。
ぶん殴ってやりたいが、この場をどう収めるべきかを考えても考えてもわからない。野辺なら、助けてくれるのではないか。もうこの際野辺でいい。助けてくれ。
そう血迷った思考を働かせそうになる俺だが、既のところで思い留まる。
いや、野辺は危険だ。こいつは岩片との繋がりがあるし、もしこんなこと岩片の耳に入ったらと思うとゾッとしない。
万が一こんなこと岩片に知られたらと思うと……恐ろしすぎて考えたくもない。
非常に癪ではあるが、とにかく、この場はやり過ごすのが懸命ではないだろうかと思うが本当にその選択肢があってるのか俺には判断つかない。
俺が黙りこくっていると、能義に臀部を鷲掴みにされ、その食い込む指の感触に堪らず震えた。
「……それとも、助けでも求めてみますか? この男に。……もしかしたら私達よりは優しくしてくれるかもしれませんよ」
こ、この野郎……。
状況が状況なだけにこいつ人の足元見てきやがる。
俺が強く言えないとわかってての言葉だろう。そんなことできないと分かってて試すような真似をしてくる能義にムカついて、俺は、能義の胸倉を掴む。
「……っ、嫌だ……」
「はい?」
「……こいつに、助けられるのは……嫌だ」
声が、震える。ちゃんと言葉になってるのかも分からないが、萎えたと言っていた能義のそれは萎えるどころか腹の中で更に硬度を増すのを感じ、顔が熱くなる。能義を見ることはできなかった。借りを作りたくないが、それでもここでバレるわけにはいかない。
「……貴方に縋られるのは悪くありませんね」
この変態が。さっさとどうにかしろ、とやつの服を掴む手に力を込めた矢先のことだった。
勢いよく扉が開く。
それだけでも血の気が引いたのに、そこから現れたやつを見て更に俺は絶望する。
「ふくかいちょー大変大変ー! かいちょーがさぁ、なんと…………って、げぇーっ! なんで童貞眼鏡いんのぉ?!」
扉の前にいた童貞眼鏡もとい野辺に気付いたそいつもとい生徒会会計・神楽麻都佳は大袈裟に飛び退いた。
次から次へなんだ今日は厄日か?というか今思えば昨日からだ、ろくなことがないのは。そもそもこの学園に来たときからまともな日なんてなかったも同然なのだが、それでもだ。
「大変なのは貴様ら生徒会連中の節操のなさだ、いかがわしい……ッ! しかもまた髪の色を抜いたな貴様!!」
「うげげーっ! 委員長クソ声うるさー! 俺今きたばっかだし今回なにもしてな……」
いし、と言い掛けた神楽はそこでようやく野辺がキレてる原因に気付いたらしい。こちらを見た神楽がピタリと動きを止める。
ほんの一瞬のことだった、やつと目が合ってしまったのだ。
「……元君、何やってんのぉ?」
空気が凍り付くとはこのことだ。悪気があるのかないのか恐らくこの男の場合は、前者か。
笑いながらそう尋ねてくる神楽だがその目は笑っていない。
結論から言おう。俺が想定していた中でも最も最悪な展開であった。
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