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翔の話2

翔は、清雅のパジャマを着て、清雅の匂いする布団に包まれながら、この学園に入学したばかりの頃を思い出していた。 翔は入学する前に市村家当主の父親から呼び出されていた。 そして、学園に通う生徒達の中でなるべく関わってはいけない生徒のリストを渡された。 「ここに書かれている者と司が関わるような事になったら、兄であるお前が守るように。司に何かあれば、直ぐに私に知らせなさい。」 俺に何かあった時は? そうふと思ったが、父親にとって大切なのは、本妻の子である自分ではなく、妾の子である司だということはよくわかっていたので、翔は黙って頷いた。 そして、入学早々に司はその正義感から、室井 清雅に目をつけられてしまった。 また面倒な相手に目をつけられたと、翔は頭を抱えたくなった。 とりあえず、父親に報告したら直ぐに返事が来た。 “室井 清雅に取り入り、司を守りなさい” 室井 清雅に取り入るということは、汚い事をしないといけない。 翔はそう思い、重たい溜息を吐いた。 二年の教室棟にある空き教室に室井 清雅とその取り巻き達がいると聞き、翔は重たい足取りで向かった。 恐る恐る、その空き教室の扉を開ければ、それまで話し声が聞こえていたのにピタリとその声が止む。 「何だ、市村家のお坊っちゃんが何の用だ?」 「お前の弟のせいで、風紀と揉めて面倒だったんだよ。それを謝りに来たのか?」 翔が教室に入ろうとすれば、ガラの悪い二人が前に立ち塞がる。 「その節は、弟が申し訳なかった。」 翔がそう言い、頭を下げると清雅の取り巻き達 が土下座しろ!と騒ぎ立てる。 室井 清雅はその様子をしばらく黙って見ていたのだが、突然立ち上がり翔の側まで来て、顔を覗き込んでくる。 「なぜお前が謝る?弟のやらかした事だろ?それも、妾の子がやった事だ。この世界の事に疎い妾の子は学園から追い出そう。今、ちょうどその話をしていたところだ。」

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