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清雅の怒り2
「翔は俺のものだ。翔は俺と縁を切る事など不可能だ。」
清雅は、翔と約束した司に手を出さないという約束を思い出したようで、苦虫を噛み潰したような顔をしながらも司の胸倉から手を放す。
翔は、清雅が必死で怒りを抑えようとしているのを感じて、彼の側までよりそっと手を握る。
「翔は自分で望んで俺と共にいるんだ。そうだろう?」
清雅は先程と比べて幾分か落ち着いた声で放し、翔に同意を求めてくる。
「ああ、俺は清雅と一緒にいたくているんだ。」
これは嘘ではない。父や市村家、弟である司のためになるかもしれないと、翔は自分で清雅に飼われることを決めたのだ。
今の清雅の様子を見れば、あの時の選択は間違いではなかったと思える。
翔との約束が無ければ、清雅は司の事を殴り倒して、その後処理を取り巻き達にやらせた事だろう。
翔は、そのような目に合った人間を清雅と共に過ごした三カ月程の間だけでも何人か見た。
だから、彼が完全にキレてしまう前に翔は司に諦めて帰って欲しかった。
しかし、翔の思いは司には届かず、司は険しい表情をして清雅に詰め寄る。
「ありえない。翔は騙されているんだ。俺は絶対に翔を取り戻す。」
清雅の纏う空気が一気に冷たいものへと変わる。司の言葉が清雅の怒りを買ってしまった。
「そこまで言うならやってみろよ。」
清雅は舌打ちをして、吐き捨てるように言った。
翔は、彼がこんなに怒気を帯びた表情をしているのを初めて見た。そして、その迫力に身震いした。
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