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第2話

「今日は晴れるって予報だったよね」 浅井 修士(あさい しゅうじ)は曇天の空に向かって呟いていた。 天気が晴れでなければならない理由などないが…陰鬱とした気持ちに拍車がかかる。 浅井は大手測定機器メーカーの人事部に籍を置いている。 人事部に所属しているが主な仕事は関係各署との調整で担当部署が多岐に渡る案件などだ。 総務から取り寄せた書類を施設管理に渡すために自分がいる二号館から本館に向かっている途中で再び呟いた。 「今時手渡しすることもないだろ…メールで十分なのに…」 ため息を落として足を踏み出したたとたんに何かにぶつかった。 「あっ」 突然体に衝撃を受けてよろければ、胸に抱えていたファイルがストンと地面に落ちた。 落ちたそれはバサッと音をたてて中身を全てアスファルトの上に吐き出すという荒業までやってのけた。 「あ~やっちゃった」 「車が通る構内で何よそ見してるんですか?」 反射的にしゃがみ込んで資料をかき集める頭上から痛い声が降ってきた。 「危ないでしょう?」 そんな事わかってる…一瞬むっとして無惨に散らばった資料を拾う手が止まったが…原因は前を見ていたお前が俺にぶつかったからだろうと胸のなかで反論した。 付き合い程度に拾った資料を手渡される。 「ああ、すまない」 「心がこもってない」 「それはどうも申し訳ありません」 勘弁してくれ、出かけた言葉を飲み込み、すぐにその場を離れた。 井上 光希生(いのうえ みきお) 俺と同い年で二年後から入社してきた後輩。 生産ラインや購買などよく分からない部署に移動し、今は総務部にいるらしい。 大学院に行ってまで勉強したいと思ったこともないからそこに進んだ彼とは人種が違うと思っている。 190近い身長、胸板も厚すぎず薄すぎず、よくこうもバランス良く体を作れたものだ。 挙げ句にイケメンときてどれだけ嫌味な奴なんだ。 仲良くなりたい訳ではないが、誰にでも人当たりはいいくせに俺には塩対応ときていてそれも面白くない。 …下らない事を考えてしまった。 早く書類を施設管理主任に渡して自分のデスクに戻りたい。

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