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第9話
顔が熱くてドキドキする…。
「どうかした?修士さん」
「何でもない…おっと」
足元にあった通勤鞄をふらついた拍子に倒してしまった。
パタン、と倒れて中身が転がり出た。
「これ…」
手のひらに乗る大きさの箱。
デスクに置いてあったものを、つい鞄に入れてしまったようだ。
拾い上げ、無防備に蓋を開けた。
「…これ何?」
当然哲が覗き込む。
「…修士さんの?」
「いや…違う……あれ…?」
世界が回る。
目眩?体が…変だ。
Yシャツの合わせを皺がつくほど握りしめた。
「これの使い方、知ってる?」
心臓から物凄い速さで血液が送り出される感覚。
「…し…知らな…い…」
哲の手が見慣れない形のモノを持ち上げる。
「…教えてあげる…」
膝から力が抜け、目の前が真っ暗になった。
いつものように眠りから覚めた…否…いつもとは違う見知らぬベッドの上…ここは……。
「あっ…」
頭が痛い。
…昨日は…そう、遠藤と梶さんと飲んで…。
…ん~…記憶が曖昧だ…。
体が怠くて重力に逆らえる気がしない…だが無理矢理体を起こす。
二日酔いのせいだろうか、頭痛が酷い。
「いてて」
とっさに頭に手を当てて自分が何も着ていない事に気づいた。
「な…何で…?」
体も何かおかしい。
腰や脚の付け根、関節に痛みや違和感がある。
胸も…少しヒリヒリするような…。
立ち上がろうとして膝が笑う。
昨日の自分に一体何があったのだろうか…。
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