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第10話
「修士さん、起きました?」
ノックと共にドアが開き、哲が話しかけてきた。
ベッドの側まで来て膝まづいて続ける。
「体調はどうですか?昨日は少し飲み過ぎたようですけど」
俺の知りたいことはそこじゃない。
「俺…何も物着てないんだけど…」
「アルコールのせいで暑がって脱いじゃったじゃないですか」
そうだったかな…そう言われればそうだったかもしれない。
「昨日は遠藤と梶さんと飲んでたよな、俺。ここにいるの知らせたかな?」
「大丈夫ですよ。彼らに断ってから連れてきましたから」
ヤバい…記憶が全然ない。
アルコールでここまで記憶が飛んだの初めてだ。
「介抱してくれてありがとう。帰るよ」
視線は裸の俺を見続ける。
「ところで俺の服、どこかな?」
すぐにでも帰りたかったが勧められるまま朝食のトーストとベーコンエッグを食べ、一度帰宅してから出勤することにした。
俺の自宅は会社から近いが、哲の家は自宅と会社の導線上にあった。
家で支度を整えても余裕で間に合う。
会社の手前にあるコンビニでコーヒーを三つ買い、遠藤と梶さんのデスクに置いた。
「浅井さん、おはようございます」
いつもよりやや早い時間に遠藤が出勤してきた。
「おはよう」
「具合はどうですか?」
心配そうに見上げてくる。
「おかげさまで何とか」
食事に誘ってきた手前、責任感じてるよな。
「浅井、大丈夫だったか?」
梶さんまでいつもより早く出勤してきた。
雨がふらなきゃいいけど。
「ご心配おかけしました。少し怠いですけど業務に差し支えありません」
「システムの尾川と仲がいいんだな」
え?
「意識がなくなるまで飲ませてどうするんですか、って叱られたよ。すまなかった」
「いえ、俺の自己管理が出来てなかったから」
「あの、また飯に誘っていいですか?アルコールは少しでいいですから」
それでも飲むんだ…飲ますんだ…。
「少し間を置いてからでいいかな?」
「はい、誘って下さい」
それから、いつものように業務を開始し、施設管理主任の宇田島さんの所へ向かった。
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