10 / 304

第10話

「修士さん、起きました?」 ノックと共にドアが開き、哲が話しかけてきた。 ベッドの側まで来て膝まづいて続ける。 「体調はどうですか?昨日は少し飲み過ぎたようですけど」 俺の知りたいことはそこじゃない。 「俺…何も物着てないんだけど…」 「アルコールのせいで暑がって脱いじゃったじゃないですか」 そうだったかな…そう言われればそうだったかもしれない。 「昨日は遠藤と梶さんと飲んでたよな、俺。ここにいるの知らせたかな?」 「大丈夫ですよ。彼らに断ってから連れてきましたから」 ヤバい…記憶が全然ない。 アルコールでここまで記憶が飛んだの初めてだ。 「介抱してくれてありがとう。帰るよ」 視線は裸の俺を見続ける。 「ところで俺の服、どこかな?」 すぐにでも帰りたかったが勧められるまま朝食のトーストとベーコンエッグを食べ、一度帰宅してから出勤することにした。 俺の自宅は会社から近いが、哲の家は自宅と会社の導線上にあった。 家で支度を整えても余裕で間に合う。 会社の手前にあるコンビニでコーヒーを三つ買い、遠藤と梶さんのデスクに置いた。 「浅井さん、おはようございます」 いつもよりやや早い時間に遠藤が出勤してきた。 「おはよう」 「具合はどうですか?」 心配そうに見上げてくる。 「おかげさまで何とか」 食事に誘ってきた手前、責任感じてるよな。 「浅井、大丈夫だったか?」 梶さんまでいつもより早く出勤してきた。 雨がふらなきゃいいけど。 「ご心配おかけしました。少し怠いですけど業務に差し支えありません」 「システムの尾川と仲がいいんだな」 え? 「意識がなくなるまで飲ませてどうするんですか、って叱られたよ。すまなかった」 「いえ、俺の自己管理が出来てなかったから」 「あの、また飯に誘っていいですか?アルコールは少しでいいですから」 それでも飲むんだ…飲ますんだ…。 「少し間を置いてからでいいかな?」 「はい、誘って下さい」 それから、いつものように業務を開始し、施設管理主任の宇田島さんの所へ向かった。

ともだちにシェアしよう!