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第11話

「あれ?顔色がよくないね」 書類を持って宇田島さんの所へ行くと休憩室に引っ張り込まれ、俺の顔を覗き込みそう言った。 対面で座り、居心地が悪い。 「ちょっと飲み過ぎまして…」 「もしかして、遠藤くんと?」 …? なぜ遠藤の名前が? 「梶さんと三人です」 宇田島さんの表情が固まった。 「どうして三人なの?」 「お…同じ所属ですし…親睦を深めて…です」 予期せぬ質問にしどろもどろになる。 「ふ~ん」 なんだか妙な事を聞かれたような気がする。 急に宇田島さんが腰をあげ、俺の肩に手を置いた。 「じゃあ、今日は僕と食事に行こう」 耳元で囁いてくる。 「え?いや…あの…」 「遠藤くんと梶くんとは良くて僕はダメなの?」 左手が俺の頬に添えられて動けない。 そう言われてみればそうだが、そもそも同じ括りにしていいものか。 「畏れ多いのでまたの機会にお願いします」 「お願いされたら…しょうがないか」 次は絶対だよ、と言いつつも離れていく手にほっとした。 「それで、こちらが前回のお話にあった資料になります……」 ああん、もう!本題に入るまでの茶番が長い! 勿論本題が終わってからも長いので今日も振り切って逃げ帰ってきた。 「浅井さん、ちょっといいですか?」 デスクで書類作成中に遠藤が控え目に話しかけてきた。 いつもの遠藤らしからぬ控え目さ…。 「どうした?」 珍しくキョロキョロと辺りを見回し、 「ここじゃアレなんで…ちょっと…」 アレって何よ。 突っ込む隙もなく資料室に連れていかれた。 「この間は邪魔が入ったので…」 ジャマ?俺が途中で倒れちゃった事か? 一番奥の隅に追い詰められた。 「俺、浅井さんの事が好きなんです」 …は?俺、年上だけど? 「付き合って下さい!」 腰を90度曲げて右手を突き出してくる。 …え?俺、そもそも男だけど? 軽く混乱する俺。 「遠藤…相手間違ってるぞ」 「間違ってませんよ」 ゆっくりと右手で俺の顔の横にある棚を掴み、左肘を反対側に付ける。 壁ドン…? 脚は股の間にこじ入れられて逃げられない。 ギラギラした雄の顔がそこにあった。

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