17 / 304

第17話

デスクでやるべき仕事を済ませ、宇田島さんのもとに行けば午前中の仕事は終わる。 二号館の出入口にいる守衛さんに会釈をし、自動扉を出ると… 「…雨、降ってたんだ…」 そういえば今日はちゃんと空見てなかったな…。 雨雲の空を暫し見上げてからはぁ~と吐息を落とし、共用傘を手にした。 スイッチを押せば傘は勢いよく開き、その透明なビニール越しに雨粒の世界が見える。 あー、憂鬱。 雨の勢いはそれほどでもないが足元に大きな水溜まり。 …そろそろ構内のアスファルトの修繕もしないと…。 「よっ…と」 その場でジャンプして水溜まりをかわす…つもりが…。 「ぎゃっ!」 水溜まりにびしゃんと尻餅をついて…ズボンがビシャビシャになった。 「…だから構内でよそ見したら駄目って言ったじゃないですか」 頭上からお説教が降ってくる。 あ~あ、またあいつと接触事故を起こした。 なんで俺の目の前にいつもいるんだよ! …ってか、おまえこそ前を見ろ!と心の中で毒づいた。 「ドウモスミマセンネ」 「……棒読み…」 立ち上がろうと地面に手を付くと、ズボンが脚にまとわりついて気持ち悪い。 「しゅうちゃん!」 大声で俺を呼ぶ声の主は…哲…。 「大丈夫?」 俺の手を掴んで立ち上がらせる。 「…大丈夫じゃない…着替えてくる」 「…とにかく、気を付けて下さいね」 そう言い捨てて井上は俺の前から去って行った。 「あの人…総務部の…井上さん?」 ぎゅっと握られた手を…そろそろ離して欲しい…。 「…ん?ああ。哲、ありがとう」 すっと手を離したら腰に手を回された…。 「しゅうちゃん、あの人どんな人なの?今晩うちで夕飯食べながら教えてよ」 「え?何で?今日は…くしゅん!」 「寒い?早く着替えないと風邪ひくよ!早く早く!」 「う…うん…」 …断りきれずに約束してしまった…。

ともだちにシェアしよう!