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第17話
デスクでやるべき仕事を済ませ、宇田島さんのもとに行けば午前中の仕事は終わる。
二号館の出入口にいる守衛さんに会釈をし、自動扉を出ると…
「…雨、降ってたんだ…」
そういえば今日はちゃんと空見てなかったな…。
雨雲の空を暫し見上げてからはぁ~と吐息を落とし、共用傘を手にした。
スイッチを押せば傘は勢いよく開き、その透明なビニール越しに雨粒の世界が見える。
あー、憂鬱。
雨の勢いはそれほどでもないが足元に大きな水溜まり。
…そろそろ構内のアスファルトの修繕もしないと…。
「よっ…と」
その場でジャンプして水溜まりをかわす…つもりが…。
「ぎゃっ!」
水溜まりにびしゃんと尻餅をついて…ズボンがビシャビシャになった。
「…だから構内でよそ見したら駄目って言ったじゃないですか」
頭上からお説教が降ってくる。
あ~あ、またあいつと接触事故を起こした。
なんで俺の目の前にいつもいるんだよ!
…ってか、おまえこそ前を見ろ!と心の中で毒づいた。
「ドウモスミマセンネ」
「……棒読み…」
立ち上がろうと地面に手を付くと、ズボンが脚にまとわりついて気持ち悪い。
「しゅうちゃん!」
大声で俺を呼ぶ声の主は…哲…。
「大丈夫?」
俺の手を掴んで立ち上がらせる。
「…大丈夫じゃない…着替えてくる」
「…とにかく、気を付けて下さいね」
そう言い捨てて井上は俺の前から去って行った。
「あの人…総務部の…井上さん?」
ぎゅっと握られた手を…そろそろ離して欲しい…。
「…ん?ああ。哲、ありがとう」
すっと手を離したら腰に手を回された…。
「しゅうちゃん、あの人どんな人なの?今晩うちで夕飯食べながら教えてよ」
「え?何で?今日は…くしゅん!」
「寒い?早く着替えないと風邪ひくよ!早く早く!」
「う…うん…」
…断りきれずに約束してしまった…。
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