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第19話
交差点の脇の植え込み近くに尾川哲は立っていた。
遠目で見れば長身とスタイルの良さが目につくのに、近寄るとぼさっとした髪と眼鏡で残念な男に分類されてしまう。
「待たせた」
「お疲れ様です」
そのまま交差点を渡るように促されて気づいた。
さりげなくエスコートされてる?
俺…男なんだけど…。
「くしゅん!」
う~さぶっ。
まだくしゃみが出る。
「風邪ひいちゃったみたいだね。食べて帰ってもいいけど…惣菜を買ってかえろうか」
「うん…っくしゅん」
「ほら」
俺の肩に温もりの残ったコートを掛けて…女子なら落ちるやつだな。
俺はそんな風に思いながら哲の隣を歩いていった。
リビングで買ってきた惣菜をつまむ。
…あんまり食欲は…ないな。
そんな俺を哲が見ている。
「今日はアルコールは止めておこうよ」
「ちょっと位なら平気だろ?」
哲がじとっと睨む。
「食事の後に風邪薬飲むんだから…アルコールは駄目」
厳しいなぁ、そう呟いても聞こえない振りをする。
「わかったよ…」
食事を取って、風邪薬を飲んで…大きなあくびをすれば哲は泊まっていけと言う。
具合が良くないから誰かいる方がいいでしょう、と言って。
…まあ、一理あるよな。
そう思って風呂を借り、俺には大きいサイズの哲の部屋着を借りてリビングでお茶を飲んだ。
途端に猛烈な眠気に襲われて…俺は深い闇に落ちていった。
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