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第20話
息が上がる…。
変だ…熱が籠って…汗が…
…気持ち悪い…。
体温が上がってきたのだろうか。
目蓋も体も重くて目を開けることすら出来ない。
それに何だか…
…いやらしい気分…。
「はぁ…ン…」
…自分の吐息が何故か甘ったるい。
そういえばしばらく抜いてなかったからかな。
…したくなるような…
…違うな…
経験したことのない快感を…焦らされているような…。
あぁ…ダメ…
競り上がってくる快感に身悶え、目蓋を閉じているのに目の奥に光が瞬く。
「…ぅちゃん…」
遠くで誰かの声が…聞こえ…た…?
「おはよう。朝だよ、しゅうちゃん」
揺り起こされ驚いて体が跳ねた。
「あ…れ?哲…」
「具合はどう?食べられるならリビングで朝ごはん食べよう」
風邪…そうだ薬を飲んで風呂に入った後から記憶がない。
発熱の名残か節々が痛む。
皮膚も敏感になったみたいで胸やお尻の表面がヒリついていた。
パジャマのままリビングに行くと、哲がぶつくさ文句を言いながら朝食を用意していた。
「ちょっと目を離したらソファーで寝てたからベッドに運んだんだよ。風邪が酷くなったら大変だし」
「ぐっすり眠ったから大丈夫…だけど…」
「だけど?」
哲の顔が見れない。
「な…何でもない」
赤く色づいた顔を見られないようにテレビを見る振りをした。
哲が俺の背中を見て薄い唇の口角を上げていた事を俺は知らない。
出勤すると梶さんが真っ先に声を掛けてきた。
「浅井、大丈夫か?」
心配そうな顔。
「梶さんにもらったドリンクが効いたみたいで治っちゃいました」
そうかよかった、と俺の髪をグシャグシャにして梶さんは にかっと笑った。
「浅井、アイツと仲がいいのか?」
アイツ…哲…?
「尾川ですか?幼馴染みです」
「…そうか…?」
何か言いたげな様子。
顎に手を当てて口がへの字になっている。
「尾川が何か?」
視線を寄越して梶さんは肩を竦めた。
「ま…いっか」
俺はパソコンに向かって仕事を始めた。
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