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第27話

唇を甘噛みされて舐められた? 「…甘いな」 感想なんて聞いてない。 「な…何て事するんですか!」 俺は心臓が別の生き物になったんじゃないかって思うほどドキドキしている。 「…付き合ってないんだろ?」 遠藤と付き合ってないことと、唇を舐められたことにどんな関係が? びっくりして体が動かない。 あろうことか再び顔が近づいてきた。 ちゅーーーーー、ぺろ。 長い!長いよ! なんで最後舐めるの!? 「ど…どうしてキスすんですか!」 「どうして?」 頭をコテンと傾けて良からぬ事を考えてる…に違いない。 「だって、嫌じゃないだろ?」 oh… 見習うべき先輩と思っていた梶さんが、実は自由人だったとか…。 「か…会社で、こんなことしないで下さい」 梶さんは俺からすっと目を反らして自分の顎を触った。 「そうか…わかった、ごめん」 謝るならしないでくれ! ん?謝罪がないのも…この場合ダメだな。 「ほら、仕事!」 缶コーヒーの底で頭をコツンして、梶さんは俺に背を向けた。 俺はすぐに立ち上がることが出来なかった。 「浅井~」 ドキッ! 「二番に内線」 いつものように梶さんが俺の名を呼ぶ。 仕事に集中してる間は他の事を考えずに済む。 でも、途切れると梶さんとのアレを思い出して心が乱れるのに…。 この人、さっきのアレを微塵にも感じさせない。 ポーカーフェイスなの? それともからかっただけなの? 自分を繕って受話器を取った。 「浅井です、お疲れ様です」 『お疲れ様、しゅうちゃん』 声の主は哲だった。 「…哲、なんで内線?」 『牽制…』 「けん…?何?」 よく聞こえない。 『晩御飯、一緒しようよ。終わったら連絡して』 「あのなぁ、私的な連絡は携帯によこせ」 『うん、ゴメンねしゅうちゃん』 内線使って掛けてくる内容じゃないだろ? あとでビシッと言わないと。 ほら、梶さんが睨んでる…仕事、仕事。

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