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第33話

『あんたって人は』 井上が俺に言った(であろう)言葉の意味がわからないまま会議室を出る人波に乗って外に出た。そして散り散りに帰っていく人達の背中を見送りつつ所属部署のある2号館に向かった。 「気分転換にはなるけど…建屋が六棟もあると面倒だよな…」 ふと足が止まる。 大きな会議は本館大会議室で行われることが多い。 俺を含め、殆どの社員は自分のいる棟からいったん外に出なければならない。 「今日は晴れてるからいいけど…」 雨の日に外に出るのは… 「…嫌だな…」 「何かあった?」 「ひっ…」 驚いて振り向くと哲が真後ろに立っていた。 「哲か…ビックリした…」 「その反応、傷つくなぁ…」 …俺の身にもなれよ。 「い…今の会議にいたのか?」 「もちろん」 そうだよな…チームリーダーだし。 「…見たくないものまで見たけど…」 「え?何か言ったか。やべ!もう戻らないと、じゃ」 哲がブツブツ言ってるが早くしないと。 梶さんの機嫌がますます悪くなる…。 自席の椅子に着くと遠藤が声を掛けてきた。 「浅井さん、お疲れ様です」 その目は不自然に梶さんの方を見ていて、目配せで何かを知らせようとしている。 「ありがとう、お疲れ様」 椅子をそっと遠藤のちかくに寄せるとプリントを俺に見せるふりをしてひそひそ話し出した。 「浅井さんが戻ってくる五分位前から急にイライラし始めたみたいで…」 「え?」 「普通に部長と打ち合わせしてたんですけど…窓の下を見た後からなんだか様子がおかしくて」 窓の下…俺が居た所だな。 「誰かいたんですか?」 「いや…誰もいなかった…いや、システムの尾川さんがいたかな」 そうだ、哲が俺に話し掛けてきた。 「あ~それだ!」 ?何で?接点なかったよね? 二人とも人に好き嫌いするようなタイプじゃないし。理由が全くわからなかった。

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