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第36話
いや、待って。
それはおかしいでしょ…梶さん…。
「水…溢れる…」
ゆっくりとベッドに体が沈んでいくが、コップの中に入った水が零れるんじゃないかとヒヤヒヤした。
「あっ」
梶さんは俺にのしかかったまま俺の手にあったコップをそっと取り上げて一口飲んだ。
俺の視線の先で喉仏が上下する。
「浅井には…俺が飲ませてやるよ」
梶さんはそう言って再びコップに口を付けた。
「んぅ…」
体温によって生ぬるい温かさを持った水が喉を滑り落ちる。
会社の…しかも男の先輩の唇が俺のそれに触れる。
口移しで水を送って寄越した後も、梶さんは唇から離れなかった。
舐めるように、貪るように、いろいろな角度で執拗にキスを求められ、呼吸すらままならない。
「…ふぁ…ん」
気づけば明らかに水ではない液体を受け入れている。
苦しくて、きつく皺が寄るほど梶さんのシャツを握っていた。
口中をねぶる舌が激しさを増し体が熱を持つと俺の思考が麻痺してきた。
「やぁ…」
上顎を舐められ気持ちよさに思わず声が出た。
「嫌か…?」
梶さんの両手が俺の頬を包み、潤んだ目で見つめる。
どうしよう…拒否出来ない自分がいる。
何でこんなにキモチイイのだろう?
「嫌…じゃ…ない…」
梶さんは少しほっとしたような表情を見せ、ワイシャツ越しに俺の体に触れた。
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