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第43話

「え…と、あれは事故です」 「いや…でも…」 「事故です!今この瞬間、俺は忘れました!」 くるっと向きを変え、俺はこの場を後にした。 昨日のアレは好き…とか…好きとか…ないよな…うん。 どうして行為を受け入れてしまったのか、そこがよく分からない。 「流されちゃったか…?」 席に着き生姜焼きを喉の奥に押し込む。 好物なのに味がよくわからなかった。 「ふぁ〜あ…」 午後一番、関係各所との打ち合わせ(という名の会議)を済ませると哲が俺の肘を取った。 「しゅうちゃん…ちょっと」 「何だよ」 構内の駐車場まで引っ張られ、社用車の中に連れ込まれた。 「何すんだよ、仕事中「そんなことより!しゅうちゃん!」だろ」 ただならぬ哲の剣幕に俺は正直驚いた。 「な…何だよ…」 「梶って人と仲がいいの?」 梶さんと聞いて顔が熱くなる。 「先輩なんだから悪いわけないだろ?」 「そういう意味じゃなくて…好きとか?」 「いやいやいや違う違う」 テレビで見るコントのように手と顔を激しく振った。 「信じてるから」 …は? どゆ意味? 「…うん?…うん…」 「ま、いいや。ところでさ、しゅうちゃん」 哲が表情を緩ませる。 「今晩、ウチでご飯たべよ。美味しい夕食用意するよ」 哲は今まで見たことの無い、微笑みとは違う妖艶な顔を見せた。

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