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第44話
「お先に失礼します」
いつもよりも早い時間に遠藤が帰って行った。
何やら今日は予定があるらしい。
梶さんは遠藤よりひと足早く定時で帰って行った。
俺は今だに資料作成が終わらずPCと戦っていた。
気づけばこの部署で残っているのは俺と部長だけ。
「浅井くん」
「はい」
「私はそろそろ社を出るけど…施錠任せていいかな」
そうだよ、部長だって帰りたいよな。
「鍵をかけておきます。お疲れ様でした」
じゃあよろしく、と言って部長は出て行った。
「あ〜、さっさとやろっ」
哲が待ってるだろうし。
あいつの料理、うまいんだよ。
誰かにつくってたのかな。
晩飯のことを考えて、ちょっとやる気を出した。
「あ〜やべ!もう九時になる!」
なるべく早く終わらせるつもりでいたのに資料が見つからなくて手こずった!
哲にメールで連絡して…それからコンビニでスイーツでも買って…ってメール…哲?
『待ってるから慌てなくても大丈夫』
んんっ、見透かしたようにメールが来た。
俺、まだ送ってないのに…勘がいいのかな、アイツ。
コンビニで和スイーツなるものを買い足早に哲の住むマンションへと急ぐが…途中大声でもめるサラリーマンを見かけた、って、遠藤と梶さん!
「…ずっと面倒見てきたんだ!」
「時間は関係ないでしょ!」
会社では仲がいいのに、どうしたのか。
「諦めないからな!」
「俺だって!」
仲裁に入ろうか遠巻きに見ていたが、遠藤と梶さんはお互い啖呵を切って離れていった。
良かった、ケンカにならなかった。
さて、哲の部屋へ急ぐか。
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