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第54話

長く眠っていたと思う。 でも…実の所は、まだ夢の中かもしれない…。 瞼も体も…鉛のように重くて、呼吸するのも苦しい。 寝返りをしようにも怠くて指一本動かすのも億劫だ。 目を開きぼんやりと眺める。 遮光カーテンの隙間から陽が入り込んでいて静かな空間。 目を閉じて再び意識を手放した。 「えっ…!」 いくらなんでも寝すぎだろ! 夢と現(うつつ)の狭間をなんども行ったり来たりして、ようやく目が覚めた。 と言っても目が開いただけ。 体は怠いしバキバキ固まって筋肉痛のような痛みもあるし正直泣きそうだった。 「今、何時?」 カーテンは開けられ、明るい光が室内を照らしている。 部屋の時計は四時を指していた。 「朝…じゃないよな…」 ノロノロと体を起こし床に足を着く。 意を決してベッドから立ち上がるが…ヤバい…産まれたての子鹿状態だ…。 両脚がプルプル震える。 腰を真っ直ぐに立つことも難しい。 哲とのアレ…のせいで尻から内蔵にかけても違和感しかない…。 昨日の痴態をにわかに思い出して赤面する。 「哲め…文句言ってやる」 俺はリビング目指してヨロヨロと歩いた。

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