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第59話
遅い時間に一人で食堂に来た。
ピーク時間を過ぎてるせいで人はだいぶまばらになっている。
人気の定食類はいくつか売り切れになっていたが俺はアラカルトを数品トレイに乗せて会計した。
荒んだ気持ちも昼飯を食べると少し落ち着いた。
そう言えば朝メシ食ってなかったな。
味噌汁を飲みお握りを食べると心が少しだけ心が柔らかくなった気がする。
俺は普段は外に食べに出るが面倒な時は食堂で食べたりもする。
お握りや冷や奴、茄子の揚げ浸しなんかが美味いしカツカレーなんかも安く食べられる。
もぐもぐと咀嚼していると見知らぬ男が二つ向こうのテーブル席に座った。
「誰だろ…」
ネームプレートはウチのだから…他拠点の職員かな…。
…にしてもデカい男…。
キョロキョロと辺りを見回して…うわっ、お茶零した…咳き込んで…賑やかだな…。
見ているとなんだか心が和む。
だが視界に人が入ってきて…ん?近づいて来るのは…井上…。
男が近づく井上に気づいて手を挙げると、それに応えて井上も手を挙げた。
井上は男の向かいに座り、その表情はこちらからは見えない。
だが男が笑って話をしているのだからきっと井上も笑顔で話をしているのだろう。
「ふ〜ん…俺には関係ないけどね…」
トレイを持って俺は立ち上がりその場を離れた。
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