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第60話

「浅井、悪いけど午後の打ち合われ出られる?」 デスクに戻ると梶さんが困った様子で俺に話し掛けてきた。 梶さんのデスクには山のようにファイルが積んであった。 「まあ、大丈夫ですけど…オレでいいんですか?」 「もちろん!今日は研究企画の方から人が来るんだけど…別件でトラブルが起きちゃってさ」 …トラブルか…。 出会いたくない相手、ナンバーワンだな。 「了解です」 「二時に1-A会議室に集合だから。あとコレ」 梶さんに手渡されたのは会議資料とおぼしき紙束。 何だこの厚み。 尋常じゃない…。 「軽〜く目を通しておいて」 「…はい」 嫌がらせ…ではないと思うけどパラパラとページを捲る。 ウチの研究・分析は優秀って聞いてたけど、あっちの人達はこういった仕事をしてるのか。 今日の会議は分析、研究、総務、人事、施設の若手で集まって新しい人材の確保や会社設備等について話し合うというものらしい。 「ん?」 梶さんにもらった資料に覚えの無い名前があった。 「営業企画管理…事代堂 志摩…さっきの奴かな」 そしてオレはあまり関わりたくない男の名前を見つけてしまった。 「…井上…。ま、仕事だから変な事は言ってこないだろ」 俺は気楽に考えることにした。 出席は免れないし。

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