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第62話

「本当にね〜僕の恋人は素敵なんです〜」 しゃべり続ける事代堂の酔いを冷まそうと、とりあえず店の外に連れ出した。 でないと大柄なこの男はいつまでも酒を飲み続けそうな感じだった。 「ほら、水飲んで」 井上が水の入ったペットボトルを渡す。 いつの間に買ってきたのか、気が利くな。 おっと、関心してる場合じゃない。 「あれぇ?開かない〜ははは〜」 事代堂はペットボトルの蓋が開けられずに一人笑って…気持ち悪い…。 しょうがないから蓋を開けてやる。 「ほら、開けたから」 井上は一歩離れて傍観している。 事代堂はようやくペットボトルから水を飲むが…うっわ!零して…。 もう知らないっ…。 俺も全てを放棄したい…。 「…おい、酔っ払い」 突然、小柄な男が事代堂に向かって絡んだ。 あぁ〜もうヤダよ。 「あれ〜?こんな所にいた〜。夢?」 うわ!事代堂、誰かと勘違いしてないか? 「あの…すみません…酔っ払ってまして…」 俺は見たらわかる事をあたふたと説明すると、何を思ったかその男は事代堂の緩んだネクタイを掴み、グイッと引っ張った。 「志摩!帰るぞ」 …知り合いなの? その姿があまりにも自然で、かなりびっくりした。 「こいつは俺が連れて帰るから」 改まって顔をよく見ると…シャープな顔立ちのイケメンだった。 「…あ…はい…」 返事はしたがこの雰囲気…犬と飼い主って感じだ。 イケメンは飼い犬…おっと…事代堂のネクタイを掴んで通りに引きずって行った。 そしてタクシーに乗り込み去って行った。 あんな事をされても嬉しそうな事代堂の顔を…俺は見なかったことにしよう…そう思った。

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