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第65話

「分かってない!」 ワイシャツの脇を引っ張るも、井上は俯いて俺から視線を逸らす。 これがいつも嫌味をしれっと吐いてすぐにどこかに行く奴か?! …嫌いじゃないって言うけど…どういうつもりなんだか…。 「ま、落ち着いて」 井上の手首を持って俺のシャツから手を離させた。 「ん?」 だが、シャツから手を離す事には成功したが、今度は逆に俺の手首を掴まれてしまった。 何で? 「ずいぶんと酔ってるな」 反対側の手で井上の体を揺するが俺の手を掴む力は緩まない。 「俺は酔ってなんかない!」 …酔っ払いはみんなそう言うんだ。 「…浅井…」 …ほら、酔ってると目が潤むだろ? 「…俺は…」 …視線が熱っぽくなってさ… 「…浅井のこと…」 …ぎゅっと抱きしめてきたり… 「…す…き…」 …好きとか寝言を言ったり…? 「…」 …いやいや…ないって! 「……」 静かになった井上の顔を恐る恐る見ると…やっぱり。 寝てる…。 そうなるんじゃないかと思った。 酔っ払いめ。 すごい力で抱きつく井上を剥がし、とりあえずはベットにゴロンと転がした。 細くても重いんだよ。 「ん…ぅん…」 気持ち良さげに寝ちゃって。 ワイシャツはいいとして、ズボンは皺になるから脱がすか…。 ベルトに手を掛けファスナーを下ろす…。 「あ…」 一瞬だけ目を逸らした。 「寝てるのにこんなにするなよ…」 緩く盛り上がった下着は見ないように脚からズボンを引き抜いた。

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