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第81話

「浅井が…暑いって言って…脱ぎ出したんだぜ」 …え? 「でも酔ってて上手く脱げなかったから…俺と遠藤二人がかりでスーツを脱がせたんだけど…」 微妙に言い淀むのが気になる。 「なぁ…」 「…ですね…」 二人のやり取り…忖度?俺はどうとらえたらいいの? 「…ハッキリ言ってもらえますか?」 目の前の二人はアイコンタクトを交わし…遠藤が口を開いた。 「誘ってきたのは…浅井さんからです」 … ……… 「…えーー?!…」 梶さんは言わんこっちゃないって顔して俺から視線を外し、遠藤はドヤ顔で俺を見た。 「あ…そうなん…、……」 …ショックだ… 確かに男だから気持ちいい事には弱い。 今まで知らなかった快感は俺に新たな悦びをもたらしたが、その弊害がコレか…。 誰彼と構わず関係を持つのは駄目だろ!俺!! 落ち込むなぁ…。 「あの…嫌でしたか?」 「確かに。浅井、酔ってたからな」 今頃…とは思うが自衛出来ない自分が悪い。 「…もう済んだ事なので…忘れてください」 これが精一杯。 だが二人の反応は俺をさらに落ち込ませた。 「俺は忘れられない」 「僕だって!」 あ〜もうヤダ…。 忘れてたけど、二人に言い寄られてたんだ。 身体だけでなく頭までも痛くなった。 「俺、帰ります…」 クシャッとしたスーツをバスルームに持ち飲んで素早く着替え、宿泊代を置いて一人先にホテルを出た。

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