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第92話
「ちょっと!近い!近いよ!」
井上の胸を押し返すが、井上の自重のせいか体勢のせいかビクともしない。
「ちょっとだけ…」
「な…んで…?」
正面から向き合うように抱きしめられて…俺は不覚にもときめいてしまった。
「浅井の事が…気になってしょうがない…」
「俺…男だし…」
「知ってる…」
「井上はゲイって訳じゃないんだろ?」
「…多分…」
「後から後悔するかもしれな…んんッ!」
井上の両手がするりと俺の頬を撫でる。
腰から背中が甘く痺れて官能の声が漏れる。
「浅井は…俺の事、嫌じゃないんだ…」
…嫌じゃないどころか…
「…俺は…」
…でも…言葉が出ない。
「これ以上手は出さないから、もうちょっとこうしてたい」
温かい気持ちのいい抱擁。
高ぶる気持ちが少しづつ落ち着いて、居心地がいい。
「ん…気持ちい…」
すりすりと肩口に顔を擦り寄せ、うっとりしてしまう。
薄い布越しに触れるやわらかな体温。
無意識のうちに井上の首筋の匂いをすんすんと嗅ぐ。
ダメなのに…身体が熱く熱を帯びて…
「ぁ…」
少し擦れただけで快感に変換してしまう。
「浅井…」
井上が身体をずらすと俺の熱が知られてしまう。
焦って背を向けるように体を捻った。
ゴリ…
「え…」
「…ゴメン…」
俺の腰に硬い出っ張りが当たった。
「…コレ…」
「だから…ゴメン…」
井上のそれは既に臨戦態勢となっていた。
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