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第98話

静かな室内には紙を捲る音やキーボードを叩く音だけ。 今日は面倒な仕事が無いから定時には上がれるな…などと考えながら俺は呑気に仕事をしていた。 「浅井、宇田島さんの所に行った?」 「え!…忘れてた!」 梶さんに言われて思い出した。 そうだった! 確か変更点の調整が…うわ、哲の所も対象か…。 とりあえずは会議室押さえて、メールして…。 一転、慌ただしく準備に追われた。 「急な連絡ですみませんでした」 どうにか集合してもらい話し合いを始める。 「…では宇田島さんから説明お願いします」 …ふう…。 ま、俺は段取って招集かけるだけなんだけどね…。 イスに座って今日のメンバーを見回すと、宇田島さんに、哲、あとは代理出席の…桐谷さんと熊田さん…。 桐谷さんと熊田さんは初めてだな。 …早く会議終わんないかな…。 「…以上で今日は終了となります。ありがとうございました」 予定より二十分も早く終わった! 「さて、戻るか」 「浅井くん、ちょっと」 宇田島さんが笑顔で俺を引き止めた。 「宇田島のお陰で会議がサクサク進みました!ありがとうございます」 ん?宇田島さんに感謝してるのに困り顔? 「…それはいいんだけど…浅井くん…朝帰り?」 「え!!ど…どーゆー意味でしょう…」 ドキンと心臓が大きく打つ。 「それ、彼氏のシャツと…ネクタイでしょ?」 「…はは」 バレてる? 大人ならスルーじゃないの? …と、心の中で突っ込んだ。

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