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第101話

小一時間程で今日の目的地、水族館に到着した。 入口近くにはペンギンの水槽があり、沢山のペンギンが放たれていた。 「うっわー、ペンギン!」 今にも走り出しそうな井上…もとい…光希生がはしゃぎ始めた。 「修士!早く行こう!」 早歩きでどんどんと水槽に近づき、携帯電話を取り出すと写真を撮り始めた。 「うわ〜可愛いなぁ〜」 「好きなんだ?ペンギン…」 「うん。だって、修士に似てる」 …は? 「どこが?」 こいつ頭おかしいんじゃ… 「健気に歩いて転ぶ所とか、気持ちよさそうに泳ぐ所とか…」 「泳いでねぇし」 「…そうだな…じゃ、今度は泳ぎに行こう」 「え?」 会話が…飛んでない? 「次、魚!」 光希生が俺の腕を取り、早足にコンクリートの建物に入った。 「海辺の生き物!触るぞ!」 「うえ〜」 ナマコやカニ、ウニなど磯の生物が触れるこのコーナーは子供に人気だ。 …子供に…。 オマエ…大人だろ? 子供と張り合うなよ…。 光希生は隣でナマコを触る小学生男子と意気投合して磯の生物早掴み選手権をしていた。 「バカか…」 俺は呆れて近くの壁に凭れてその様子を見ていた。 楽しそうにイキイキとナマコを持ち上げる光希生。 いつしか俺の口元は緩く口角を上げていた。

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