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第102話

「臭い。手を洗って来い」 「へーい」 磯の生物を散々触りまくったせいで光希生の手は磯臭さが凶悪なレベルになっていた。 これから食事をするのに、その臭いは有り得ない。 待っている間、目の前の階段を登ってみると一般客が水槽の様子を上から見学出来る仕様になっていた。 「…あんまり見に来る客はいないんだな」 水面が波立って中の魚の様子は見えないが、つい覗き込んで目を凝らす。 「う〜ん、見えない…。いや、この下にいるんだから少し位は…うわぁ!」 体に衝撃をくらい反射的に手摺に捕まった。 振り返ると光希生の顔が近づいて…ガツッ… 「いってえ!」 「急に居なくなるから!」 頭突きをくらった額をさすると、目の前に心配そうな顔。 「…あ…スマン…つい…」 「メール送ってもスルーだし」 よく見ると光希生の顔が汗ばんでいた。 「…探してくれてた?!」 「…もう、いいよ」 照れくさそうにフイっと向こうを向いた横顔が、何だか愛しく見えて…俺は頭を搔いた。 隣接するレストランで昼食を取り水族館のショップに入ってみると多種多様な商品が並んでいて、大勢の家族連れやカップルで賑わっていた。 …居づらいな… どう見ても男二人は異質だろ? 光希生は俺と違って次々と商品を手に取ってアレコレ喋り続けていた。 「こっちのサメとこのダイオウグソクムシ、どっちがいい?あ、このシュモクザメもいいな!」 「光希生、はしゃぎすぎ!」 声を掛けたタイミングで光希生が他の客とぶつかってしまった。 「ほら…すみません…」 代わりに謝ってよく見ると…見たことあるような…? 「だ…大丈夫です」 相手はそう言って人混みをかき分けてそそくさと奥に進んで行った。

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