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第116話

「熊田のヤツ…浅井さんに怪我させて!」 医務室で簡単に湿布を貼ってもらい俺はとりあえず仕事に戻る事にした。 本当は病院行きを勧められるほど痛みがあるのだが…桐谷さんの話を聞いておきたかったのだ。 「何でそんな喧嘩腰に…相性が悪い、とか?」 痛みでゆっくりと歩く俺のスピードに合わせてくれる桐谷さんは、多分優しい人だ。 人を容易に傷つける人には見えない。 「え…?ん〜、どうかな?」 あれ?目を逸らされた。 「あ〜、ん〜、熊田も悪い奴じゃ無いんですけど…頭に血が上りやすいっていうか…、そう!虫の居所が悪かったみたいで…」 何だ? シドロモドロ感? 「へえ〜」 って事は相性が悪い訳でも嫌いな奴でもないのか。 「本当は仲がいいんだ」 「ち・が・い・ま・す!」 急に立ち止まって喋り出すから…釣られて急停止した。 「いてッ…」 「あっ!すみません…」 「はは、大丈夫」 シュンとしながらもエレベーターのボタンを押し、俺がのんびりと乗り込むのを待ってくれた。 「ま、程々にね」 「本当にすみませんでした」 俺が降りるのをエレベーターの中から見送りつつ謝罪…ん? 俺を殴ったの熊田さんだよ? 何で桐谷さんが謝罪? 頭の中には疑問符が湧き出してしまった。

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