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第117話

「資料…ッ、てて…」 立ち上がる痛みで服の上から身体を押さえてしまった。 あ〜痛い! 立ったり座ったりが地味に辛いよ〜。 「浅井さん、大丈夫ですか?手伝いますよ?」 遠藤が心配そうに俺を見る。 「あ…うん、だいじょぶ…」 咄嗟に見栄を張って助けを断ってしまった…。 仕方ない。 我慢して資料室まで行くか…。 なるべく平静を装って、でもいつもより遅い歩みで、慎重に歩いて行った。 資料室の扉が少し開いていたが誰か閉め忘れたのだろう。 自動消灯の照明もまだ消えていない。 気にせずに中に入る。 「去年の…ん〜と…」 一番手前の棚を探して何冊か手に取ってペラペラ捲る。 …違うな… 持っていたファイルを棚に戻し隣の棚に手を伸ばした。 「だんまり?」 奥から人の声…。 ヤベ…先客だ。 「アレはなかったんじゃないの?」 こんな所で何話してんだよ…やだなぁ…。 「お前こそ、アイツの話ばっかりしてんじゃねぇよ!」 「別格なんだからしょうがないでしょ?」 「あぁン?デレデレしてみっともない!」 「そっちこそ!ヤキモチ?はぁん?」 …えっと…痴話喧嘩…かな? ヤバいな…。 見つかる前に…早く出ないと…。 その辺の資料を適当に何冊か鷲掴みして扉に向けて一目散! 「くま…ン!」 だが資料室を出る直前のその声で…桐谷さんの顔が頭に浮かんだ。

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