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第125話
出社して遠藤の顔を見て、俺は週末のアレを思い出した。
…っていうか、出勤するまで忘れてた…。
「遠藤…おはよう」
「あ、浅井さん!おはようございます」
いつものように人懐こい笑顔で遠藤が寄って来た。
そっと廊下に誘い出し、邪魔の入らない所で事実関係を確認した。
「はい、浅井さんは酔っちゃって…それでホテルに連れて行ったんですけど…何か?」
自分が酔って荷物になってるのに“ 俺に何かした?”とは聞きにくい。
「な…何も…いや、あ!そう!スーツ!皺にならないように脱がしてくれたんだな!ありがとう」
「あ…はい、いいえ…大した事してないですよ」
おい!
返事が挙動って遠藤が目を逸らした。
…何かされた?俺…?
「うん?とにかく、ありがとな…」
…う〜ん…怪しい。
何もされてなかったみたいだけど…跡も痛みも無かったしなぁ…。
カタカタとキーボードを鳴らしながら文章を入力しているが、気になって仕事に集中出来ない。
見返すと誤字、脱字が多数…。
もう昼だしちょっと聞いてみるか…。
「ちょっと飯食ってきます」
デスクを離れて、俺は他の二人に聞いてみる事にした。
…まだ時間が早いし取り敢えず先に食べるか…
冷蔵ケースの中の惣菜を選び、次々トレイに載せた。
社員カードで精算して食堂の入口に近い端の席を陣取る。
目の前のおかずからは生姜のいい匂い。
「いただきます」
箸を伸ばしたその時、目の端に熊田さんの姿が。
「あ、く…熊田さん!」
俺は迷わず声を掛けた。
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