128 / 304

第128話

「はぁ…」 桐谷さんと熊田さんの仲が良いようには見えなかったのに、肝心な事を二人に聞けなかった。 聞いた所で面と向かって、仲悪いです!とは言わないか。 「むぅ〜、気になるなぁ」 気になるけど…俺がとやかく言うような事でも無いのかな…。 自分でもよく分からなくなってきた。 よし、今日はもう考えない! 仕事する! 「…って感じなんだけど、どう思う?」 「どうして僕に聞くの?しゅうちゃん」 俺は駐車場で見かけた哲を捕まえて、桐谷さんと熊田さんについての情報提供を求めてみた。 「率直に言うと…」 「うんうん」 「放っておいたら?」 哲が俺の顔を見て言った。 「えー!」 「大人なんだし。それに、二人でが仲良さそうにしてるの見た事あるよ」 何だそれ? 俺だけか…。 俺だけ妙な気を回して先走ってンのか。 …ガッカリ…。 「あぁ!もう!これから外出じゃなかったら色々教えるのに!」 「悪かった。急いでる所捕まえ…うわぁ!」 俺は後ろに体が傾き、腕をばたつかせた。 「オイ!シュウと何話してンだ?」 …ミキ…声、怖いよ… 「さっさと顧客の所に行きな」 「へ〜い…」 …ちょっ!さりげなく胸と腰に手を回すんじゃない! どかそうとするが、結構キツく抱かれてる。 「見せつけないでよ…腹立つから。あ、週末『 アイロニー』に行けば分かるかもよ」 …ガルル…と俺の後ろで番犬が唸ってる…。 …『アイロニー』あそこか…。 あそこで、俺は色々なものを失った。

ともだちにシェアしよう!