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第130話
二人は俺たちからほど近いカウンターの端の席に座り、慣れた様子でバーテンダーと会話をしている。
内容は…よく聞こえないが桐谷さんが表情豊かに話して熊田さんが相づちを打ちながら聞いている。
時折笑い声が聞こえ、桐谷さんが熊田さんの背中を叩く。
「何だ…本当は仲がいいんだ…」
ちょっと安心した俺は次々と酒を頼んだ。
「気に入ったの?」
「ん、飲みやすくて美味しい」
甘くてオシャレで…キレイ。
「シュウ飲みすぎてる。もう止めた方がいい」
ミキが手を重ね、その体温にときめく。
「まだ大丈夫…」
くいっ…とグラスを空けると…今度はミキの指が後頭部の髪を撫で、柔らかく掴んだ。
…ん…キモチイイ…
「ほら…飲みすぎるとこの後…困るだろ?」
耳元に唇を寄せて紡ぐ言葉は甘い響きを含む。
意味が分からずにキョトンとしたが、その後みるみる顔が赤くなり一気に酔いが回った。
「あ…ダメ…苦しくなってきた…」
息が上がり、乱暴にネクタイを緩める。
シャツのボタンが固くて外せなくて、ミキ…と甘えれば俺より大きな手が一つ一つ器用にボタンを外していった。
「ン…この奥に部屋があるんだけど…使えるのかな?」
「横になれる部屋があるのか?」
うん、と首を縦に振ればミキは店員を呼んで休める場所がないか聞いていた。
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