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第138話
「浅井さん」
突然後ろから腕を掴まれ、驚いて身体が必要以上に揺れた。
「桐谷さん、な、何ですか?」
俺を呼び止めたのは桐谷さんだった。
「あの…仕事中すみません。ちょっとだけいいですか?」
今日は進捗も順調だし…
「大丈夫ですよ」
「ここだとアレなんで…こっちに」
手招きをされて、俺はのこのこついて行った。
「今日はマイカーで来てるんです」
デカっ…!
六〜七人乗れるワンボックス…でもこれ値段の高い豪華なヤツじゃん…。
真ん中のシートに二人並んで座り、俺は桐谷さんが話し始めるのを待った。
「悩み事…って言うんでしょうか…」
え!
相談されるの?
人生経験の少ない方の大人だよ?
「俺で大丈夫な内容ですか?ハッキリ言って役に立たないですよ、俺」
「浅井さんじゃないとダメなんです!」
「ひっ!」
急に両手を握られて、ブルっと震えた。
背筋が寒くなる。
「あの…お…お話は…」
「そうそう、コレについてなんですけど…」
目の前に出された一枚の写真…。
「え…俺…?どうして…?」
改めて見た桐谷さんの顔は、笑顔というにはやや毒気のようなものを含んでいた。
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