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第141話
「で、桐谷さんと少し話すんだけど、その後飯でもどう?」
「行きます!」
牛丼を頬張って俺の話を聞いていた遠藤はもちろん快諾した。
「じゃあ、よろしく!唐揚げ一つやるよ」
「わあ!あざーす」
嬉しそうに口に入れ、モグモグと咀嚼する間もぼふぼふとしっぽを振っているようだ…。
当日は番犬よろしく俺のピンチを救ってくれ、と心の中で祈った。
「浅井さん…と遠藤…」
約束の時間、遠藤と二人で桐谷さんとの待ち合わせ場所にやって来た。
桐谷さんはちょっと眉間に皺を寄せたが他は至って普通だった。
「桐谷さんとのお話が済んだら、遠藤と飯食う約束なんですよ」
出来るだけ平静を装って話す。
「僕は遠藤が同席しても構いませんよ」
…え?!
「…い、いいんですか?」
「はい、僕は…ね」
…うぅ…
俺は…良くない…良くないよ…。
「まず、どこに行きます?」
「アイロニーで、いいですか?」
先頭を歩く桐谷さんが僅かに振り向いてそう言った。
「は…い」
夜、街頭が映し出した桐谷さんの横顔は…光の加減のせいか…青白い肌と色素の薄い髪色が酷く幻想的に見えた。
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