141 / 304

第141話

「で、桐谷さんと少し話すんだけど、その後飯でもどう?」 「行きます!」 牛丼を頬張って俺の話を聞いていた遠藤はもちろん快諾した。 「じゃあ、よろしく!唐揚げ一つやるよ」 「わあ!あざーす」 嬉しそうに口に入れ、モグモグと咀嚼する間もぼふぼふとしっぽを振っているようだ…。 当日は番犬よろしく俺のピンチを救ってくれ、と心の中で祈った。 「浅井さん…と遠藤…」 約束の時間、遠藤と二人で桐谷さんとの待ち合わせ場所にやって来た。 桐谷さんはちょっと眉間に皺を寄せたが他は至って普通だった。 「桐谷さんとのお話が済んだら、遠藤と飯食う約束なんですよ」 出来るだけ平静を装って話す。 「僕は遠藤が同席しても構いませんよ」 …え?! 「…い、いいんですか?」 「はい、僕は…ね」 …うぅ… 俺は…良くない…良くないよ…。 「まず、どこに行きます?」 「アイロニーで、いいですか?」 先頭を歩く桐谷さんが僅かに振り向いてそう言った。 「は…い」 夜、街頭が映し出した桐谷さんの横顔は…光の加減のせいか…青白い肌と色素の薄い髪色が酷く幻想的に見えた。

ともだちにシェアしよう!