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第187話
ネクタイを捻じり、ミキが夜部屋に来る事を約束させて俺はデスクに戻った。
梶さんと遠藤は相変わらずしょぼんとしていたが、普段はどちらも元気が良すぎるので静かなのもたまにはいいのかも。
昼を知らせるチャイムを聞いてから、俺は昼食を食べに食堂へと向かった。
「うわ〜混んでる」
チャイムを待たずに来ればよかった…。
俺はなんとか卵トロトロ親子丼をゲットして空いてる席を探す。
「お、あった!」
柱の影、ようやく見つけた席に座ると横から声が掛かった。
「それ美味そうですね」
「浅井さん、お疲れ様です」
斜め前の席に桐谷さん、隣に熊田さんが座っていた。
…あ…気まずい…
そう思ったが、二人は顔色一つ変えずに穏やかだ。
「親子丼、自分で作るとどうしても卵に火が通り過ぎちゃって上手くいかないんです」
「へぇ、自炊するんですか!美味しいんだろうな…」
熊田さんの不用意な一言に桐谷さんの眉が吊り上がる。
「美味しいだろうけど…井上さんのだってわかってる?」
「…はい…」
怖…。
緊張感高まる中で好物を食べるもんじゃない。
好きな物でも消化に悪い!
「仲直りされたんですね。良かったです」
話を逸らすように言うと…桐谷さんはさっきとは打って変わって耳まで真っ赤になった。
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