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第188話

とろっとろの親子丼をスプーンで掬って口の中へ。 ほんのり甘く出汁の効いた汁はご飯との相性が抜群で、はふはふと熱を逃がしながら咀嚼した。 ん、ま〜い! ここは何でも美味いんだ。 歳のせいか和食を好んで食べるけどガッツリ食べた時はカツカレー。 辛すぎず、甘すぎず、サックサクのトンカツにカレールーを絡ませると激美味でヤバい。 「しゅうちゃん、お疲れ様」 「ん?お疲れ」 いつの間に空いたのか俺の後ろの席に哲がトレイを置いていた。 「親子丼か、美味そう」 「美味いよ」 「一口…」 「やらね…てか、お前も親子丼じゃないか」 哲の置いたトレイには俺と同じく親子丼がほわ〜と湯気を上げていた。 「しゅうちゃんが食べてるの見たら食べたくなっちゃって」 「何でだよ」 「はは…、あ、しゅうちゃん…」 急に哲が声を潜めた。 「あの人達…振ったの?」 「あ?」 は…?何のこと? 「梶さんと遠藤さん。やたらと落ち込んでるように見えたから…。徹底的に落ちると言えば…しゅうちゃんに振られたのかなーって」 「俺は何もしてない」 「そうなんだ。ま、僕はどうでもいいけど」 言うだけ言って、哲は親子丼を食べ始めた。 …何で俺? …あ…確かに告られたわ! 今の今まで忘れてたけど。 「やっぱマズかったかなぁ」 熊田さんがぼそっと呟いた。 「え?何か知ってる…?まさか“浅井ファンクラブ”についても知ってる…とか?」 顔はそのままにすーっと視線だけ動いていった熊田さん。 怪しい。 「その話、詳しく、ね」

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