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第190話
「え…っと…そうなの?」
「そうです!」
桐谷さんがどやぁ…って顔してる…。
「あの…どの辺が…とか、聞いても…いいのかな…?」
にわかには信じ難い。
缶に残っていたビールを煽った。
「まず…清楚」
「…」
はぁ?
語彙が、おかしい。
「それからとにかく優しい」
「…」
いや、フツーだろ?
「微笑みの貴公子、と呼ばれてます」
「それ言ってんの悠雨だけだし」
「熊!」
「まあまああ…」
二人の間に割って入ってセーフ!
「マジか?」
「マジです!」
…頭痛くなってきた…
テーブルの上にあった缶ビールを手に取り、蓋を開けて一気に飲んだ。
「はーっ、暑っ!恥ずかしい」
それにしても…この二人付き合ってるみたいだけど、俺みたいなののファンクラブなんか入ってて大丈夫なのか?
「桐谷さんが、お…俺の…ファンクラブ入ってんの?」
「熊田もです」
な・ん・で?
揃ってかよ!
「あ…そう…なんだ…」
急に身体のチカラが抜け、全身が暑くなった。
ヤバい…酔いが回ってきた。
「今日は押しかけて悪かったな」
ちょっとフラつくが立ち上がろうと膝を立てた。
「ん…ん?」
体が傾く。
だがやんわりと受け止められた。
「少し休んだほうがいいですよ?」
口角の上がる口元。
一見親切に聞こえる言葉だが、桐谷さんの目は笑っていなかった。
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