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第211話
「…はい、どうぞ」
よいしょ、と言って梶さんは席に着いた。
「あれ?それしか食べないんですか?」
梶さんのトレイにはうどんが一杯。
ネギと揚げがのっていて、いい匂い…。
「ん?まあ…そんな腹減ってないし」
大人の男がキツネうどんだけって、少な過ぎだろ?
「具合、良くないんですか?」
チラリと目線だけ寄越して、梶さんは息を吐いた。
「…ん、まぁ…そんなトコロ」
仕事中もあんまり覇気がないから、梶さんの言う通りなのかも。
「俺に仕事寄越して、早く帰って下さい」
「いや、そーゆー訳でもないんだ。すまん」
…スマンって?
「あぁ…こういう事って、浅井だけに頼んでも…ダメだよなぁ…」
は?
ため息混じりに何言ってんだろ。
「…井上に言って…ん〜でもなぁ…」
「梶さん、うどん伸びちゃいますよ?」
「んん?あぁ」
梶さんの思考がよく分からない方向に進んでしまったようなので、俺は昼飯の続きを食べた。
夜、俺の部屋でミキと寛ぐのもすっかりと習慣づいてきた。
もう遅いからと二人でベッドに入りイチャイチャタイムに突入する前、ミキが俺に週末の予定を言ってきた。
「どこだって?」
「だから、明日の夜から俺とちょっと出掛けよ」
三連休が始まる前夜の金曜日から、ミキが俺をどこかに連れていくと言う。
…それは、いい。
だが、どこに、という問い掛けに答えない。
「それは…お楽しみ?って言うか俺達の今後を円滑に進める為、って感じじゃダメか?」
…なんじゃ、それりゃ?
これ以上聞いても埒が明かなそうなので仕方なく俺は、うん、と頷いた。
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