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第226話

「おはようございます、部長」 「おはよう、浅井くん」 「あ、メガネ新調なさったんですか?よくお似合いですよ」 「ありがとう」 清潔感溢れる濃紺のスーツに淡いブルーのシャツ。 青を基調にした濃淡のストライプ柄のネクタイが良く似合う。 あぁ、可愛い。 こんな地味なオヤジにもちゃんと挨拶して尚且つ新しいメガネにまで気づいてくれる優しさ。 「浅井、コレ俺んトコに混ざってた」 「あ、梶さん。すみません、ありがとうございます」 「浅井さ〜ん、このメールの返信って急ぎですか?」 「急がないけど今日中に送っといて、遠藤。あ、そろそろ会議だった!行ってきます!」 出勤してすぐに声を掛けられても、仕事の相談をされても、何時、誰に声を掛けられても嫌な顔一つしないんだよね〜。 ほ〜んと、部下の鑑。 そんな彼の人の良さを利用し…コホン、活かして、難しい人や、多部署が関わる案件の担当にした。 適材適所ってやつ。 浅井くんを筆頭にして、僕の部下は美形が多い。 部長席は何が良いって、働く部下の横顔をさりげなく気が済むまで見ていられるって事。 ふふん。 ·····ん? 携帯が震えてMINEの通知が見えた。 光希生…か。 懐いてくる甥っ子の願いを叶えてこっちの拠点に彼を引っ張ったのは紛れもなく僕だけど…ちょっと妬ける。 お気に入りの浅井くんをみすみす狼に食べさせるなんて…はぁ。 ま、梶と遠藤をけしかけたり、怪しいプレゼントを鞄に忍ばせたりと仕返しはしたけど、ね。 浅井くんのファーストキスも抜け目なくもらったし、可愛く鳴く姿も見せて貰えたからそろそろ潔く身を引くかな…。 ふと振り返って窓の外を見下ろすと、構内を歩く男の姿。 手を振り、急に走り出すその先にもう一人の男。 彼、前は空ばかり見上げていたのに·····。 「あ〜若いっていいね。さ、仕事仕事」 乱暴に腰掛けた椅子が、ギィ、と鳴った。 終わり

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