227 / 304
SS1-1 『 井上光希生 』
高校二年の時だった。
文化祭実行委員だった俺は校内巡回という名目でクラスの係をサボタージュしていた。
ここは私立の有名男子校。
都心から少し距離はあるが、外部からの見学者は多い。
二日目の午後、外来者は最大に増えて巡回中に俺は人の波にもまれながらも一時間ほどかけて半分の教室の見回りを終えた。
「人が多くて疲れる…」
空き教室で休憩をとろうとしたが、残念な事に施錠管理されていた。
「チッ、入れねぇ」
しょうがない、と辺りを見回せばガランとした教室があった。
「ここ、写真部か」
·····丁度いい。
ここで少し休憩しよう。
俺は迷わず足を踏み入れた。
「よ、どした。サボりか?」
入口にいた男が親しげに俺に声を掛ける。
「まさか。そんな事する訳ないデショ」
さらっとあしらって奥へと入り、そのへんにある椅子にドカッと座った。
相変わらず閑散としてんな。
「先輩方から差し入れ貰ったからやるよ」
「サンキュ、丸」
ペットボトルのジュースが弧を描き飛んできた。
「あっぶねーな」
丸(まる)、こと金剛丸巴(こんごうまるともえ)は俺のクラスメイトで写真部の部長。
そして数少ない悪友。
俺は受け取ったペットボトルの蓋を開け、その中身を喉に流し込んだ。
「んまっ。ん?この写真…」
俺は展示された一枚の写真に目が止まった。
立ち上がり、間近で眺める。
真っ赤な夕日の“ 赤 ”、子供と木々のシルエットの“ 黒 ”が何とも幻想的で不思議な怖さを感じる。
「それ、いいだろ?」
「丸が撮ったのか?」
「名前見ろよ」
写真の下にタイトルと撮影者の名前があった。
「『 落日 』二年 浅井修士」
「暇そうだったから入部させた」
「二年に?」
「そ。部員少ないんだよって言ったら仕方ないなって即決!」
·····人が良すぎるだろ。
「バカじゃねーの?」
「スゲーいい奴なんだよ」
は?
このご時世に?
頭の中にお花でも咲いてるんじゃないのかって、その時俺は思った。
ともだちにシェアしよう!