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SS1-3 『 井上光希生 』

「よい…しょ…と」 汚れた軍手が鉄の蓋と枯葉を鷲掴みにしてゆっくりとずらしていった。 「お金…一枚だけ?」 「あ…ああ」 それだけ確認すると、地面に膝を着き軍手を側溝に突っ込んで落ち葉やゴミを掻き出す。 「…どこかな…あ、あった!」 腐り始めた落ち葉の間にキラリと光る百円玉。 そして比較的汚れていない軍手の甲の部分で硬貨の泥を落としていく。 「ん、これでよしっと。はい」 手のひらに鈍く光る硬貨。 「…ど…うも」 「あ〜これも拾っておくか」 俺が言葉を発するやいなや、背を向けて掻き出した落ち葉をビニール袋に集めだした。 ·····真面目で優しくて穏やか…そしていい人… ·····こいつ…浅井か? 「浅井…?ありがと」 浅井は一瞬振り返り、汚れた軍手でまた落ち葉を拾いだした。 「ああ、うん。仕事だから」 その日から俺はとにかく浅井の事が頭から離れなくて、自分に言い訳をしつつ浅井の姿を探した。 全校集会、校庭での体育の授業、食堂…。 何でそんなに気になるのか…自分に問い掛けながら。 そして答えは割合と早く見つかった。 昼休みに俺は廊下で金剛丸と話す浅井を見かけた。 笑顔で話す二人の姿を見て、俺は…苛立ちを覚えた。 同じ写真部の部長と部員なんだから至極当たり前の事。 ·····なのに… ギュッと拳を握って廊下を引き返した。

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