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SS1-4 『 井上光希生 』

「さっきすんげー顔してたぜ」 「うっせー」 昼休みもそろそろ終わる時間、丸は机に突っ伏す俺の前の席に後ろを向いて座っていた。 クラスメイト達は各々自由に過ごしていて、教室は閑散としている。 「おまえも…か…」 頬杖をつく丸がため息と同時に意味深な言葉を吐いた。 「それ…どういう意味?」 目だけ上を向き丸と視線を合わす。 「噂だけど、浅井ってキレイな顔してるだろ?よく男に好かれるみたいで…まあ告られたって話は聞かないからデマかもだけど…」 ·····聞き捨てならない。 「それで、当の浅井は…男が好きなのか?」 …だとすれば…俺にもワンチャンあるんじゃない? 「違うな」 「そうか…」 ゲイの丸が違うと言うのだから、浅井はきっと女子が好きなんだろう。 丸は面倒だからと対外的にはヘテロを装っているが、実はイケメン大学生(男)と付き合っている。 何故俺がそれを知っているのかというと…相手はここの卒業生で俺の兄、井上愛央生(いのうえあおい)が、その相手だ。 「浅井は物凄く色恋に疎いみたいだから向けられた好意に全然気づいてないけどな!」 はは、と高らかに笑う丸。 「そうか」 ちょっとだけ安心した。 「光希生は…浅井が好きなのか?」 「分かんない…けど多分·····」 「俺、協力するよ?」 「ありがと。でも…まだ、いい」 そっか、と丸が小さな声で呟くと予鈴が鳴り、俺たちは自分の席に着いた。

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