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SS2-2 『 宇田島 美祐 』
今日はツイてない。
午後から桐谷くんは外出。
他のイケメン社員も概ね席を外していた。
「はぁ、気分が澱むと思えば…雨空じゃないか」
いつの間にか降り出していた雨。
誘われるように席から立ち上がって外を眺めた。
黒く厚い雨雲が降らせる滴は細かくて、傘をさしていても服が濡れそうだった。
「あの子…」
屋外に佇む若い社員。
傘もささずに暗い空を見上げていた。
「…浅井くん…」
·····君はいつも空を見上げている。
晴れの日も、太陽が隠れている日も、雨に濡れながらも…。
浅井くんは若手社員で人事関連の仕事をしている。
なかなかの美形なのだが彼の魅力は外見じゃない。
物凄く人が良い、この一言に尽きる。
今は人事の採用が彼の担当なのだが、新入社員のケアは抜群に出来るらしく、モ部長もご満悦の様子。
彼の事を“ アニキ ”と慕う社員もいるらしい。
本当にいつも笑顔で取り乱してる姿なんて見たことがない。
落ちてるゴミは率先して拾ってゴミ箱に捨て、困ってる人には積極的に声を掛ける。
彼の人柄はお墨付きだ。
.......それにしても…雨に濡れても未だ空を見上げる君は、一体何を想っているのだろう…。
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