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SS4-6『 梶 一 』

「なーんて、ね」 遠藤は今までのやり取りが嘘のように爽やかに微笑んだ。 「…お…俺相手に…何してんだよ、全く…先輩相手に冗談言ってんじゃねぇよ」 言葉と共に安堵のため息を吐いた。 …が、腕の包囲網は解かれない。 「おい、どけろよ、コレ」 「…冗談なんて、言いませんよ」 ……え?! 点になった目で奴を見た。 うっわ…またその顔かよ…。 背中をやや丸め、下から上に睨むように見上げる…雄の…。 見せる相手、間違ってんぞ! 「…俺、そーゆーの要らないから」 俺も負けじと奴を睨みつけた。 「新しい自分を発見出来ますよ、先輩」 だがいつの間にか恋人繋ぎにされた手が顔の横にあった。 ……メンチ切ってる間に…気づかなかった! 「いやいや、必要ないね」 手に力を込めて振り払…えないな…。 「離せよ、馬鹿力」 「すぐこんな無防備になって…どっちが上か、教えてあげます」 その遠藤の物言いに俺はキレた。 「あぁん?!何言ってんの?じゃあ教えてもらおうじゃん」 鼻が触れるほどの至近距離。 「そうこなくっちゃ」 遠藤の顔がさらに俺に近づいて… 「んッ!」 唇に噛み付かれた。 「下手くそ!キスってのはこうやんだよ」 ぷっくりとした遠藤の下唇に柔らかく吸い付き、舌で舐める。 そのまま歯列を割るように口中に侵入し、奴の上顎に舌を這わせた。

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