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されどそれは苦難の日々 7
いつもより幾分早い時間に家を出て通勤電車に乗った。
昨日の夜、浅井は同じ会社のよく知らない奴にお持ち帰りされたからだ。
無事だろうか…あいつはモテるから凄く心配になる。
電車を降り、会社へと急いだ。
自動ドアをすり抜け階段をかけ上がり、廊下の先の扉の向こうに浅井はいた。
「浅井、大丈夫だったか?」
振り向く顔を見てやっぱり飲ませ過ぎたと反省した。
いつもより顔色がよくないし、目の下の色が濃い。
「ご心配おかけしました。少し怠いですけど業務に差し支えありません」
「システムの尾川と仲がいいんだな。意識がなくなるまで飲ませてどうするんですか、って叱られたよ。すまなかった」
「いえ、俺の自己管理が出来てなかったから」
明らかに俺と遠藤が浅井に集中的に飲ませたからだろ?
「あの、また飯に誘ってもいいですか?アルコールは少しでいいですから」
遠藤が懲りずに…いや、懲りるのは浅井か。
「少し間を置いてからでいいかな?」
「はい、誘って下さい」
そんな事言って…遠藤にしつこく誘われたらまた行くんだろうな。
…なんて考えていたら、あれから一週間も経たないうちに遠藤が浅井を飲みに誘っていた。
浅井が宇田島主任と飲みに行ったという情報を聞きつけてか始業前からキャンキャンと吠えていた。
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