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されどそれは苦難の日々 12

「相談事があるって言うから話を聞いてただけですよ」 遠藤との事を聞いてもあくまでも先輩と後輩の関係だと、浅井はそう言っているんだろう。 「…それだけ?」 「…まぁ、そんな…です」 目の前に立つ男を下から見上げているが、浅井の頬はピンク色に染まっている。 「何?顔赤くして。何かあった?そうだろ」 正直過ぎるこの男は自分でボロを出している事に恐らく気づいてない。 「何でもないですよ。ほら、水飲んで酔いをさましましょう」 浅井が水を飲ませようとするが…自分の腕なのにタイミングが合わず水が上手く口に入らない。 零れた水が襟を濡らして喉元が気持ち悪い。 「あぁ、ネクタイまで水が染みちゃう」 浅井の手で首が解放され、至近距離で彼の顔を見つめていたら浅井を試すような言葉が俺の口から出た。 「口移しでちょうだい」 言いながら…俺は浅井をベッドに押し倒した。 「水…零れる…」 コップの水を気にしつつも浅井は無抵抗でベッドに沈んでいく。 嫌じゃないの? ベッドに押したら次にやる事なんて決まってるでしょ? 「浅井には…俺が飲ませてやるよ」 浅井の手からコップをもぎ取り、口に含んだ。 「んぅ…」 口付けて含んでいた水を浅井に送り込み、それを合図にして俺は自分の舌も浅井の中に侵入した。 歯列や上顎、舌も全てを味わうように丹念に舐めた。 「やぁ…」 拒否を意味する言葉の意図が掴みきれない。 「嫌か…?」 両手で浅井の顔を覆い、その意志を探る。 「嫌…じゃ…ない…」 浅井のその一言で俺の欲望のタガが外れた。

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