273 / 304

されどそれは苦難の日々 20

「遠藤…お前何しに来たんだよ…」 「たまったま、梶さんがいたから声掛けただけですよ?」 「…チッ…」 「うっわ、感じ悪…。あ、大ジョッキひと…「二つ!」…」 なんで遠藤がいるんだよ! 俺は今傷心中なんだ!! そんな俺の心の叫びなんて一ミリも気が付かない遠藤は俺の真正面の席に腰を掛けた。 「梶さん…浅井さんに何かしましたね?」 うつむき加減に上目で尋問するような目。 「そ…んなの、お前には関係ないだろうが」 「…あ!もしかしてヤっちゃっ「ちょっと!こんな所で言う話じゃない!」たんだ…」 …何で分かるんだ? …エスパーか? 「えっと…言い難いんですけど、…まさか強k…「それは無い!絶対無い!」…ですよね?」 無理やり…では無かった…。 水を飲ませてもらって…いや、飲ませたんだったか…? 嫌だったら全力で拒否るはずだし…。 って事は少なくとも、死ぬほど嫌ではなかった… そうだ…きっと。 「…もしかして…酒の力…です?」 「…」 言い当てられてギョッとした。 「…何で分かんだよ…気持ち悪いな…」 「うっわ〜引く〜。最低ですよ、それ」 「自分でも分かってるから…言うな」 「…でも、ヤる事やって、上手くいってないんでしょ?」 「…」 コイツにムカつくのはあまりにも図星をつかれたせいだ。 「睨まないで下さいよ。そっか、…じゃまだ、チャンスはあるのか」 「え…遠藤…お前…」 「俺だって浅井さんの事、欲しいです!」 これは…遠藤からの宣戦布告…だ。 険悪な雰囲気で飲む酒が嫌で、グラスを空にしてすぐに店を出た。 「…ずっと面倒見てきたんだ!」 「会社は関係ないでしょ!」 「諦めないからな!」 「俺だって!」 通りには疎らに人通りがあったがそんなの構いもせずに啖呵を切った。 チクショウ! 浅井…俺のモンにならないかな…。

ともだちにシェアしよう!