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されどそれは苦難の日々 29
マンガとかで見かけるダイイングメッセージを残して発見されるアレ(死体)によく似ている格好だが、よく見ればちゃんと胸が上下に動いている。
良かった、生きてる。
嘔吐や苦しんで暴れた痕跡も無い。
ってか、この人スエットのズボンは穿いてるけど上半身は裸。
背中をどこかに擦ったのか所々赤くなっていた。
何があったんだ?
「難波さん、大丈夫ですか?」
「ちょっと待てよ」
坂上が両手を伸ばして難波さんを揺り動かそうとするのを片腕で止めた。
「寝てるのか倒れてるのか分からないのに動かしていいのか?」
「え?ダメなの?」
「どうしようか…」
「コチョコチョすればいんじゃないの?」
は?
コチョコチョって、擽るのか?
「失礼しますね〜難波さ〜ん」
坂上は遠慮なく横たわる難波さんの脇をコチョコチョと擽る。
見てるこっちがこそばゆい。
「全然反応無いなぁ…難波さーん」
反応が無いといいつつも熱心に指を動かす坂上。
「あ!少し動いた!難波さん、聞こえますか?」
「…っ……ん…ぁ……やだ……我慢……」
体を捩り意味不明な寝言を言っている。
「難波さん、大丈夫ですか?気分はどうです?」
俺が呼びかけるとギュッと閉じていた目が薄らと開いた。
「アキラ……てないで…」
…は?
「寝言…?」
そう言って難波さんは再び目を閉じた。
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