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されどそれは苦難の日々 35
「ほら、遠藤飲んで、ぐいっと〜」
遠藤を元気づけるって名目だからな、一応は飲ませないとな。
ビールにチューハイ、ワインと片っ端から注文してどんどん飲ませた。
遠藤は酒に強いから無茶な飲み方しても大丈夫。
「そんな急ピッチはダメですよ」
だが浅井は遠藤のグラスにワインを注ぐ俺の腕をそっと差し止め、代わりにいつ頼んでいたのか水の入ったグラスを遠藤に握らせていた。
「遠藤、水も飲んで。あとチーズも食べる」
…ぐ、ぐぅ…世話焼き女房かよ!
羨ましいな…チクショウ…遠藤…覚えてろよ…。
負の念を込めて視線を遠藤に向けるが…クソっアイツデレッデレになって俺の念に気づきもしない…。
つまんねぇな、遠藤より浅井に集中するか。
確かワインは飲めたよな?
「浅井も飲めよ」
ワイングラスを浅井の目の前に置き、ちょっとだけ強引に勧めた。
「いや…俺は…」
そんな風に俺に遠慮なんてするなよ。
「明日は休みなんだし、ハメ、外そうぜ」
どうしようかと少し困ったような表情も何だか堪らない…。
「遠藤一人に飲ませるの、勿体ないぜ?」
じいっと浅井の目を見つめて、あるかどうか分からない目力なるもので訴えてみた。
すると躊躇いながらも浅井はグラスを手に取り、俺に差し出してきた。
ほら、断れないだろ?
血のような赤い液体をその中に注ぐと浅井はゆっくりと口をつけた。
「これ、美味いです」
「そうか、もっと飲めよ」
飲んで…もっと酔えよ…
…他の男の事なんて忘れて。
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