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されどそれは苦難の日々 50

「え…っと…昨日はどのあたりからホテルに行く流れになったんでしょう…」 そこ…やっぱ聞くのか。 「『 アイロニー』で酒を飲んでたら遠藤が飲みすぎて暫く店で休ませてもらってたんだけど…」 …どう話せばいいんだろう…。 「…休んでる間に浅井が眠っちゃって…」 「入れ替わり僕が起きたので梶さんと二人でホテルに運んだんです」 「終電も終わってたからな」 うん、嘘は言ってない。 だが浅井の表情は険しい。 「…それで…俺だけが裸だったのは…どうして…?」 浅井だけ全裸だったのは…そりゃ見たかったから! だがそんな事言えない。 睨みつけるような眼差しに良心が痛む。 だがそのままストレートには話せず ただ時が過ぎていく…。 しかたねぇ、俺目線で説明するか。 「浅井が…暑いって言って…脱ぎ出したんだぜ?でも酔ってて上手く脱げなかったから…俺と遠藤二人がかりでスーツを脱がせたんだけど…」 大丈夫、これは真実。 「なぁ…」 遠藤にアイコンタクト。 「…ですね…」 …よし! 遠藤との連携もバッチリ! 「…ハッキリ言ってもらえますか?」 顔を赤らめ唇を噛んだ浅井…もっかいやりたくなるなぁ…。 「誘ってきたのは…浅井さんからです」 うんうん。 「…えーー?!…」 そうだよな…そういう反応するよな。 こら、遠藤はドヤ顔しない! 「あ…そうなん…、……」 浅井のさっきまでの紅潮した顔は失せ、一瞬で顔面蒼白になった。 あ〜らら。 「あの…嫌でしたか?」 しゅんとした風な遠藤。 お前…劇団員か!と思う演技力! 「確かに。浅井、酔ってたからな」 「…もう済んだ事なので…忘れてください」 「俺は忘れられない」 「僕だって!」 にわかに渾沌とする室内。 だが… 「俺、帰ります…」 俯いて表情を硬くした浅井はバスルームで乱雑に脱ぎ捨ててあったスーツに着替え、無言で一万円札をベッドに置いて部屋を出ていった。

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