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大学四年の夏休み、就活の成功を恭と周防の二人が祝ってくれた。
周防は既に自身の会社を立ち上げ軌道に乗せていて、恭は実家の家業を継ぐと話していたから、ようやく二人に追い付けたことが咲夜にとっては嬉しかった。
急な仕事の呼び出しで、周防が深夜に部屋を出ていき、二人きりになった部屋で、恭に突然キスをされてから、友達だった関係が……少しずつ変化した。
(どうしていいか……分からなかった)
ただ触れるだけの優しいキスに、咲夜は困惑したけれど、何故か尋ねる事も出来ず、恭も理由を告げなかった。一度だけなら酒の上での戯れであると思えたけれど、それから二人きりになる度、恭はキスを仕掛けてきた。
(だから、俺は……)
勘違いしたりしないようにと、必死に自らを戒めていた。恭への恋慕の情をハッキリと自覚したのはそれからだったが、告白する勇気も持てずに、卒業しても側にいられる友人の道を選び取った。
それなのに――。
(急に……居なくなった)
「ん……うぅ」
重たい瞼をゆっくり開き、周りに他人の気配が無いのを確認すると、咲夜はゆっくり息を吐き出し、まるで磔けられたみたいに動かぬ体へ視線を落とす。
「あっ」
右手首には足首と同じ拘束具が填められていて、その鎖は多少の弛みを持たせて真横に繋がれていた。そして左手も……同じような拘束具が使われ繋がれてはいるものの、添え木のような物で固定され、包帯がぐるぐる巻きにされている。
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