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自分で自分が分からない。咲夜の事を大切に思えば思うほど、彼を閉じ込め、思う存分甚振り鳴かせたい欲求が恭の心の中に渦巻き、結果自ら連絡を絶った。
ギリギリの選択だったと周防に話をした時に、「好きなんだ」と言われて初めて自分の気持ちを自覚した。
ずっと……手放したことを後悔していた。だから、周防によって置き去りにされた彼を躊躇なく閉じ込めたのだ。
(なのに、どうして……)
咲夜を組み伏せ散々鳴かせている間、恭の心は身体と共に、悦びに満ち溢れていた。だが、今目の前で涙を流す咲夜を見て、それとは全く逆の感情が心の中に生まれている。
「サク……泣くな」
全く勝手な言い分だ。と、心で自分に毒づきながら、咲夜の目元へ指を這わせて零れる滴を掬い取る。と、嗚咽は更に大きくなり、解放したばかりの腕が、ゆっくりと……縋りつくように、恭の背中へと回された。
「恭……やっと…話、できた」
ふわりと微笑む咲夜の顔は、疲労の色がかなり濃い。それでも必死に息を吸い込み話そうとする健気な姿に、恭の心は言いようのない淡い感情に支配される。
無意識に伸ばした腕で咲夜の細い体を抱けば、きっと限界だったのだろう、ガクリと力が抜け落ちる。だけど、恭の背中へ回された指は、しっかりとシャツを握りしめていた。
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